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直接法vs間接法

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直接法と間接法を自分なりにまとめてみました。

私個人の理解の整理が主目的なので何か間違っていたらごめんなさい。

直接法とは

簡単に言うと学習言語で学習言語を教える手法です。

日本語で「りんご」を教えるなら、「りんご=apple」ではなく「りんご=丸くて赤くて甘酸っぱいくだもので写真だとこんな感じ」のように教えます。

直接法のいいところ

  • 学習者の母語を選ばない
  • 意味や用法を本質的に理解できる
  • 会話や聴解に(どちらかといえば)有利

学習者の母語を使わないで教えるので学習者が何人であろうと教えることができます。「日本語教師だから英語上手なんでしょ?」とよく言われますが、そんなことはないです。上手な人が比較的多いと思いますけど直接法を使えば英語ができなくても教えられます。学習者の母語を選ばないので、世界各国から学生を募るような日本国内の日本語学校は直接法を採用していることが多いですね。

また学習者の母語が介在しないので日本語の本来の意味に近い理解ができるとされています。例えば「いきなり」「突然」「急に」のような似ている言葉も単純に「Suddenly」という理解ではなく、細かい使い分けまで意識させることができるといった具合ですね。

その性質上授業中は日本語を話したり聞いたりする機会が増えるので、自然と会話やリスニングの力が伸びやすいです。とはいえこれは学生の得意不得意もあるので一概には言えませんが。

間接法とは

間接法は学習者の母語を使って学習言語を教える手法です。

私たちが中学校で英語を勉強した時をイメージしてもらえばいいかと思います。

(今の若い人たちはもしかしたら違うかもしれません)

間接法のいいところ

  • 学習者の負担が少ない
  • 学習スピードが速い
  • 学習言語の母語話者でなくても教えやすい

なんといっても間接法の利点は学習者の負担が少ないことです。日本人だけでなくほかの国の人たちも外国語を勉強するときはまず、母語を使った授業(間接法の授業)をすることが多いです。慣れ親しんだ学び方のほうが受け入れやすいですよね。

そして直接法に比べると授業の進捗を劇的にはやめることができます。実際のところ、質さえ考慮しなければ初級を1週間で終わらせることもできます。外国の日本語学校だと時々極端に短い学期を設定していることがありますが、そういった学校の多くは間接法ですね。賛否が分かれるところだと思いますが、現地の事情や学習者のニーズに合わせるとそういった形も必要になってくるのかもしれません。

それから日本人でなくても日本語を頑張って勉強した人なら授業をしやすいというのも学校運営を考えると利点になります。養成講座を受講しにくい外国人の先生には使いやすい教え方です。


反対にそれぞれの悪いところ、不便な点は何でしょうか。

直接法の不便なところ

直接法の不便なところは学習者への負担が大きいところです。勉強中のことばをガンガン使って習うことになるのでかなり神経を使います。1時間もまじめに授業を受けたらふつうはヘロヘロになってしまいます。

内容も発想力や柔軟性が求められることが多いので苦手な学生はとことん苦手な勉強法になります。「A=C」で完結するのが間接法なら「A=B」「B=C」を聞いてAとCの関係を考えるのが直接法と言えるかもしれません。

あとは教師側にもある程度専門性が求められます。先ほど例に出した「いきなり」「突然」「急に」の違いは何か日本語で外国人に説明しましょう!となっても即応できる人は少ないんじゃないでしょうか。

学生と教師双方に負担を強いる教え方かもしれません。でもその分うまく使えたときの効力は絶大ですよ。

間接法の不便なところ

間接法はどうしても言語の壁が立ちはだかります。韓国人が学生なら韓国語、ベトナム人ならベトナム語ができないと教えることができません。私たち日本人からするとかなり難易度が高いですよね。「じゃあ英語で教えればいいじゃん」となりますが、実は外国人でも英語ができない人ってたくさんいるんです。あと英語が母語でないなら間接法の利点を生かしきれないですしね。

ちょっと特殊な例だと「私は〇〇族だからこの国の公用語はあんまりわからないです」という学生がいることもありました。

またこれは教師側の技量の問題でもありますが、間接法で習った学生は会話が苦手な方が多いです。できているつもりでもネイティブが聞くとごちゃごちゃな文法で話していたり、外国人に慣れていないので何を話せばいいかわからないなど、学習にかけた時間を思うと気の毒に感じることが多々あります。

まとめ

大切なのはどちらが優れているかということではなく、何に重きを置いて教えなければいけないのかだと思います。私は自分の勤務地、能力、学生の到達目標を考えて直接法は7割から5割、間接法は3割から5割ぐらいで調整することが多いです。また運営母体の理念やビジネススタイルにもよりますね。ゆっくり時間をかけて語学力を確実に身に着けさせることが求められる大学や専門学校は直接法を採用することが多いかもしれませんし、極端なスピードでカリキュラムを組む必要があるなら間接法も選択肢に入ります。

結論いいも悪いもないということですね。

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